ありがちな夏の風景



犬は、人間以上に環境に対する順応性が高い生き物である。自分がいっしょに暮らしていく家族のメンバーとか家の間取りとか、その家のルールとか、ちゃんと教えたという実感はなくても、時が経つにつれきちんと馴染んでくれるから大したものだ。

順応というか諦めというか、例えば、飼われることになった家族が最悪に下品なメンバーだったら犬もさぞがっかりだと思う。肛門のアップの写真を撮られたり、夏場に丸刈りにされてヤギみたいな姿にさせられたり、肉球や耳の裏の臭いをいつもかがれたり、そんなセクハラに耐えながら一生を過ごさなくてはならない。

でも犬も犬で、けっこうちゃっかり生きていると思う。
例えば夏の暑い日にに留守番をさせられたりする時、飼い主のせめてもの配慮で、居間だけクーラーをつけておいてあげたりする。居間でうたた寝をする犬に「行って来るね」と声をかけて出かけようとするけど、やっぱ犬は玄関までついて来てしまう。
「居間クーラーつけてるから、寝ときな」
そんな優しい言葉をかけてから、玄関のドアを閉める。

みんなすると思うけど、ドアを一度閉めてから、またそっと開けてみたくなる時がある。それはもちろん、犬がまだ玄関で待っているかどうかを確かめるため。ここでまだ待っていてくれてたりすると、彼の忠誠心ポイントが若干アップし、飼い主としてけっこう嬉しい気持ちになる。
あまり音をたてないように、ドアをそっと開けてみる。
いた!さっきと同じ姿勢で、まだこっちを見てる。「ここで待ってるから」そう言いたげな表情。なかなか素直なやつだ。
それなら居間のクーラーを消していこうかとも思うけど、居間の冷気が玄関にもれるだけでも涼しかろうと思いそのまま外出。

暑い中留守番悪いなーという思いから早急に用事をすませ、帰宅。家の前に自転車を止めるキッとう音で気付いたのか、ワンワンと吠える犬。
そっとドアを開けると、嬉しそうにしっぽをふる犬の姿があった。「ごめんね〜、暑かったろ〜」
背中の毛をなでてやると、ひんやり冷たい。居間のドアが、若干広く開いていた。

確かにあの時は、「玄関蒸し暑いけど、帰ってきたら一番にわかるように僕ここで待ってるよ」みたいな顔してたくせに。察するまでのなく、彼はちゃっかりクーラーのきいた居間で昼寝をしていたのだ。
待っている犬のために一刻も早く帰ろうと、炎天下のなか必死に自転車をこいできた自分は何だったのだろう…。そんな後悔でいっぱいの気持ちになる。

しかも自転車の止まる音を確認してから、そそくさと玄関まで来て待機するという演出付き。きっとその時の犬の顔は、寝起きで面倒くさそうに目なんかまだ半目で、いかにもだるそ〜に起き上がったに違いない。


留守番中暑い思いをしていなかったんなら別にそれでいいけど。暑い中ずっと待っていたっていう自分をわざわざ演出しなくてもいいじゃんか。
飼い主が犬に気をつかう以上に、実は、犬のほうが飼い主に気を使って生きているのかもしれない。
のびのび暮らしてくれているならそれでいいけど。なんだかなぁ(´∇`)

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