はしゃぐ子ども、はしゃぐ大人


(財)福岡県動物管理センターでは、小学生を対象に動物愛護教室を行っています。生活空間を共有する動物を正しく理解し、人と動物の間に起こる(起こっている)様々な問題を予防、回避する知恵や技術を身につけてもらうことが、この教室の目的です。
 昨年の秋、ある小学校で動物愛護教室を行いました。対象学年は1年生、67名。テーマは『身近な動物と仲良く』です。学校で飼育されているうさぎを箱に入れて、事前に教室に連れてきておいてもらいました。まず、パネルやぬいぐるみで小さな動物へのアプローチ、正しい抱き方について勉強します。「うさぎの耳は何故大きいの?」との質問には「遠くの音を聞くため」「小さな音でもよく聞こえる」とこちらが望む答えが返ってきます。「じゃあ、うさぎのすぐそばでみんなが大きな声を出したら、うさぎはどう思う?」と聞き返すと「いやだ」「こわがる」「人間が嫌いになる」と子どもたちは口々に答えます。「うさぎや小さな動物が好きなのはどんな子どもかな?」と問うと、「静かでやさしい子ども」との答え。回りの子どもたちも頷きました。そこで、箱の中からうさぎを取り出すと、「ギャーーー。うさぎィーーー」嵐の到来です。
 他の小学校でも、子どもの反応はほぼ同様です。群集心理も手伝っているのでしょうが、情動をそのまま行動に出すことは、子どもであれば極めて正常な反応です。「静かでやさしい子どもはいないですね」とうさぎを箱へ戻すと、やがて教室は静かになります。大声を出して、はしゃぎまわりたいのを我慢している子どもたちの姿は、「オスワリ」を覚え始めた子犬に似ていて、その瞳には葛藤が見え隠れします。そんな子どもたちを目の当たりにすると、くすぐられるような温かさ、いとおしさを感じます。
 多くの子どもは、動物を見たら我を忘れます。からだ全体で喜びを現し、自分が楽しいんだから相手だって楽しいに違いないと思ってしまいます。自分の欲求をまっすぐ押し通すことは非常に快感です。でも、はしゃぐ子どもは小さな動物にとって捕食動物そのものかもしれません。他者を認め、他者の欲求や不快感を知り、自分の欲求に潜む横暴性や理不尽さに子どもたちがしっかり気付いてくれるのは、何才の頃でしょうか?
 教室の最後に、多摩川のタマちゃんの写真を見せました。「タマちゃーーん」またしてもものすごい嵐の到来です。少し静かになって「たくさんの人に取り囲まれて、騒がれて、タマちゃん、喜んでいるかな?」と聞くと、ほとんどが首を横に振りました。
 昨年の夏、子どもみたいにはしゃいでいた大人がいましたが、その人たちは何にも気付かないで大人になったのでしょうね。
(獣医師・Y)
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