健康は動物とともに


現代人は健康に対して非常に敏感になっているようです。心身の健康のために犬や猫を飼うと語る人は少なくありません。
犬や猫は今を生きる人の心の隙間にピタッと収まるジグソーパズルのピースの一枚かもしれません。
(財)福岡県動物管理センターでは、設立の昭和57年から子犬の譲渡会を行っていますが、最近は高齢の参加者が増えてきており、犬は老後を健康に生きるためのキーワードと捉えられている向きがあります。子供を育て、職場で人を育てた経験のある年齢の方は犬や猫に対して優しく、育て方もきっと上手に違いありません。
でも、ある程度の年令から動物の飼育を始めようとする場合は、お互いの寿命のこと、まさかの時の動物の身元引受人をしっかり考えておく必要があります。「世話をする人がいない」という理由で行政に引き渡される犬、猫は毎年かなりの数にのぼっています。
こんな相談がありました。「犬を飼ったら血圧が下がるそうだから、犬を譲渡してほしい」犬を飼ったら、必ず血圧が下がるでしょうか?もしかしたら、反対に血圧が上がるかもしれません。
「うつ病の子供のために犬を飼いたい」、「脳血管障害で下半身麻痺になった家族のリハビリに犬が欲しい」この2つはかかりつけの医師から勧められたのでセンターに電話をしてみたということでした。犬を飼うことの効用を医療関係者が認めれば、軽い気持ちで患者に勧めるかもしれません。
しかし、わかりきったことですが、犬は薬でも医療器具でもありません。犬を飼いさえすれば誰もが健康になるわけでもなく、そして残念ながら、犬は誰にでも簡単に飼育を勧められる種類の動物ではありません。番犬にならないと言って犬が捨てられる世の中です。
健康のために飼ったのに、健康にちっとも役に立たないと言って犬を捨てる人が出てこないとも限りません。
恣意的な目的だけで動物の飼育を始めないでください。動物から健康を貰おうと思ったら動物に健康を与えましょう。幸せであろうと安らぎであろうと笑顔であろうとそれを欲するならば、自分が欲するものを相手に惜しみなく与えられるかを考えてみましょう。
動物との暮らしは一方方向でもなく、短期間で終わるものでもありません。お互いが気を配りあい、時間をじっくりかけてこそ欲するものが手に入るのです。自分の欲しているものだけを動物から奪い取り、命までも平気で奪い取る人達には、健康も幸せも決して訪れることはないでしょう。
(獣医師・Y)
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