| 「動物管理センターには良い犬も入ってくるんでしょう?」こんな質問をよく受けます。
良い犬とは売買の対象になる、金銭的価値がある純血種、血統書付きの犬に他なりません。内面にどのようなものを蓄えているか、人間社会に適応できるかなどは注目されず、ひたすら人間がつくりだした価値が最優先されてしまいます。
純血種志向を非難するつもりはありません。好みや思い入れもあるでしょうし、飼育目的や環境によっては純血種を選択した方がよい場合があります。しかし、特定の仕事をさせるフィールドがない今、犬種特有の行動を無視した飼い方が普通になっています。
たくさんの中からお気に入りを選ぶ、嫌なもの不要なものは排除するといったことは私たちが快適な生活を送るための基本的な欲求かもしれません。でも、欲求が肥大すればするほど、圧迫を受ける側の苦しみを感知するレーダーは鈍くなっていくものです。
我が国の犬、猫の数は社会の受容限度を遙かにオーバーし、年間に処分される数は50万頭を越えています。その半数またはそれ以上が子犬、子猫です。このような現状で、新しく犬や猫を産ませるということは処分される命を増やすことに間接的に加担しているのだと多くの人に気付いて欲しいのですが、「この子の子どもの顔がみたい」、「はやりの犬だから飼ってくれる人はいくらでもいる」といとも簡単に繁殖させる人が後を絶ちません。遺伝性疾患が疑われるような個体においてさえも怯むことなく素人繁殖が行われています。子犬製造工場のような場所で産まれる子犬に比べたら家庭で産まれる子犬の方がよほど幸せだと考える人もいますが、皆がそんな考えを持てば、問題はさらに膨らみ、問題の解決を不能にしてしまうでしょう。その犬種を真に愛する人なら、繁殖よりも寿命半ばで放棄された犬のレスキューにエネルギーを注ぐのではないでしょうか?
動物管理センターに収容される成犬のおよそ1〜2割が純血種です。どんな純血種が収容されても、センターではそれを良い犬とは呼びません。家庭を追い出された犬はどんな犬であろうとすべて悪い犬たちです。それも限りなく運の悪い犬たちです。ギュッと濃縮した手間と愛情をかけ、祈りをこめて、センターの門から再び家庭へ送り出す僅かばかりの子犬がいわゆる良い犬です。そして、その子犬たちは動物管理センターの誇りでもあります。(獣医師・Y)
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